固定化した老化細胞を青色で蛍光検出できる

同仁化学 固定化細胞用老化検出キット

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本キットは老化マーカーの1つであるSA-βgalを定量するキットです。青色で検出するため、緑色・赤色色素との多重染色が可能です。

細胞老化は、近年ガン化因子として知られるSASP の発見や、Stem cell分野での老化現象の発見など、各分野で重要視されはじめています。
細胞老化過程は細胞死や代謝変化、オートファジーなどの事象が相互に関与し、複雑に進行するため関連マーカーとの同時解析:抗体や蛍光低分子を利用した多重染色が有用な解析方法となっています。

老化研究をより深めるために多重染色で観察する

<細胞老化と関連指標の相関マップ>

細胞老化と関連指標の相関マップ
参考文献(図矢印中番号)
  1. H. Tanaka, et al., Cell Reports, 2017, 18(9), 2148.
  2. L. Garcia-Prat, et al., Oncotarget, 2016, 7(11), 12286.
  3. M. Bitar, et al., Am J Physiol Endocrinol Metab., 2013, 305(8), E951.
  4. C. Wiley, et al., Cell Metab., 2016, 23(2), 303.
  5. E. Liao, et al., Cell Death Dis., 2014, 5, e1255.
  6. K. Nishimura, et al., Cell Rep. 2015, 10(8), 1310.
  7. M. J. Son, et al., tem Cells. 2016, 34(12), 2840.

キット内容

<キット内容>

コンポーネント 数量 備考
SPiDER Blue 1本 従来品β-galactosidase 検出試薬SPiDER-βGal の検出原理を採用した青色色素
Assay Buffer 1本 内在性β-ガラクトシダーゼのバックグラウンドの影響を抑える

<使用量の目安>

1 plateあたり、35 mm dish : 5 枚、μ-Slide 8 well 5 枚、6-well Plate 1 枚, 96-well Plate 1 枚

特長

  • SA-βgalの定量が可能
  • 免疫染色との共染色が可能
  • 汎用される緑・赤色との多重染色が可能
  • シンプルな操作

汎用色との課題を解決

汎用色との課題を解決

<SA-βGal検出製品に関して>

本キットSPiDER Blueは固定化細胞専用の老化検出色素で、免疫染色等との多重染色解析に最適な色素です。初めてSA-βGal検出を行う際には、生細胞・固定細胞どちらにも使える汎用的な緑色色素のSPiDER-βGalをおすすめいたします。

①蛍光顕微鏡、フローサイトメトリーによる細胞サンプルの解析:Cellular Senescence Detection Kit - SPiDER-βGal
②プレートリーダーによる細胞サンプルの解析:Cellular Senescence Plate Assay Kit - SPiDER-βGal

SPiDER色素ラインナップと比較表

製品名 特徴 生細胞 固定化細胞 装置の対応 検出
Cellular Senescence Detection Kit
SPiDER Blue
免疫染色等との多重染色による
詳細な解析が可能
Ex=350-450 nm
Em=500-560 nm
Cellular Senescence Detection Kit
SPiDER-βGal
生細胞・固定化細胞に使用でき、
初めての検出に最適
Ex=500-540 nm
Em=530-570 nm
Cellular Senescence Plate Assay Kit
SPiDER-βGal

シンプルな操作

細胞を固定後に色素を添加するだけのシンプルな操作で老化細胞の検出が可能です。

シンプルな操作

※ 本キットは固定化細胞専用の製品となります。生細胞での検出はできません。

技術情報

原理

正常細胞は、分裂を繰り返すことや、酸化ストレス等によりDNA に損傷を生じます。損傷DNA が修復されない場合には、不可逆的に細胞分裂を停止することにより細胞の癌化を抑制します。不可逆的な細胞分裂の停止は細胞老化と呼ばれており、老化細胞にはSA-β-gal (senescence-associated β-galactosidase) が過剰発現しています。このため、SA-β-gal は、老化マーカーのひとつとしてその判別に汎用されています 1, 2)。本製品は、SA-β-gal を簡便かつ高感度に検出するためのキットです。固定化細胞中のSA-β-gal と反応することで青色蛍光を発するため、緑や赤色の蛍光特性を持つ色素や蛍光標識抗体による免疫染色との共染色が可能です。

  1. Dimri, G. P. et al., Cell Biology, 1995, 92, 9363–9367.
  2. Park, A. M. et al., J. Biol. Chem., 2018, 293(41), 15815-15826.
図1 SPiDER Blue による老化細胞の検出原理

図1 SPiDER Blue による老化細胞の検出原理

蛍光特性(β-galactosidase と反応後のSPiDER Blue )

正常細胞は、分裂を繰り返すことや、酸化ストレス等によりDNA に損傷を生じます。損傷DNA が修復されない

図2 β-galactosidase と反応後のSPiDER Blue の励起・蛍光スペクトル

図2 β-galactosidase と反応後のSPiDER Blue の励起・蛍光スペクトル

実験例:Doxorubicin誘導老化細胞を用いた酸化ストレス関連マーカーとの多重染色解析(フローサイトメトリー)

Doxorubicin処理により老化誘導したA549細胞(DOX)と通常細胞(CTRL)を用いて、老化細胞の酸化ストレス関連マーカーの変化をフローサイトメトリーで多重染色解析しました。老化マーカーとしてSA-βGalをCellular Senescence Detection Kit - SPiDER Blue, 酸化ストレスマーカーとしてtotal ROSの検出をROS Assay Kit -Photo-oxidation Resistant DCFH-DA-, DNAダメージマーカーとしてγH2AXをDNA Damage Detection Kit - γH2AX – Redで検出しました。
その結果、 SA-βGal陽性の老化細胞において、total ROS, γH2AXが増大し、老化に伴う酸化ストレス関連マーカーの増加を多重染色により検出することができました。

SPiDER Blue
ROS Assay Kit
DNA
Damage Detection Kit

【検出条件】

使用装置:SONY 社: SA3800

  • SPiDER Blue: PacificBlue
  • Photo-oxidation Resistant DCFH-DA: FITC
  • γH2AX – Red: Cy3

<実験手順>

*事前に、通常培地で培養した細胞 (CTRL) と、DOX 処理 (0.2 μM DOX 3 days → 通常培地 3 days) した細胞 (DOX) を準備

  1. A549 細胞 (5 x 105 cells/ml) の細胞懸濁液を準備した。
  2. 細胞懸濁液を1.5 ml チューブに1 ml 入れ、ピペッティングにより懸濁した。
  3. 300 x g で5 分間遠心した。
  4. 培地を除去し、Photo-oxidation Resistant DCFH-DA Dye Working Solution を500 μl 添加し、ピペッティングにより懸濁した。
  5. 37℃で30 分間静置し、300 x g で5 分間遠心した。
  6. 上澄みを除去し、 4% PFA/PBS 溶液を200 μl 添加し、4℃で一晩静置した。 (30 min でも可)
  7. 1,000 x g で5 分間遠心した。
  8. 上澄みを除去し、 15 µmol/l SPiDER Blue 溶液 (McIlvaine buffer, pH 6.0) を500 μl 添加し、ピペッティングにより懸濁した。
  9. 37℃で30 分間静置し、1,000 x g で5 分間遠心した。
  10. 上澄みを除去し、 0.1% TritonX-100 溶液 (PBS) を100 μl 添加し、ピペッティングにより懸濁した。
  11. 室温で20 分間静置し、1,000 x g で5 分間遠心した。
  12. 上澄みを除去し、 Blocking Solution を300 μl 添加し、ピペッティングにより懸濁した。
  13. 室温で20 分間静置し、1,000 x g で5 分間遠心した。
  14. 上澄みを除去し、 Anti γH2AX antibody staining solution 500 μl を添加した。
  15. 室温で1 時間静置し、1,000 x g で5 分間遠心した。
  16. 上澄みを除去し、 Secondary antibody-Red staining solution 500 μl を添加した。
  17. 室温で1 時間静置し、1,000 x g で5 分間遠心した。
  18. 上澄みを取り除き、PBSを 500 μl 添加し、ピペッティングにより懸濁した。
  19. 1,000 x g で5 分間遠心した。
  20. 上澄みを除去し、PBSを 500 μl 添加した。
  21. サンプルをフローサイトメーター測定用のセルストレーナーに通した。
  22. フローサイトメーター (SONY 社: SA3800) で測定した。

実験例:固定化細胞を用いた脂肪滴染色と細胞老化アッセイ(イメージング)

Doxorubicin処理により老化誘導したA549細胞(DOX)と通常細胞(CTRL)を用いて、老化細胞の脂肪滴蓄積をイメージング解析しました。老化マーカーとしてSA-βGalをCellular Senescence Detection Kit - SPiDER Blue, 脂肪滴をLipi-Deep Redで検出しました。
その結果、 SA-βGal陽性の老化細胞において、Lipi-Deep Redのシグナルが増加したことから老化細胞での脂肪滴蓄積を共染色により検出することができました。

実験例:固定化細胞を用いた脂肪滴染色と細胞老化アッセイ(イメージング)

[検出条件]

  • SPiDE Blue 検出波長: 405 nm (Ex), 400–550 nm (Em), 1.0%, 600V
  • Lipi-Deep Red 検出波長: 633 nm (Ex), 650–700 nm (Em), 1.0%, 650V

*事前に、通常培地で培養した細胞 (CTRL) と、DOX 処理 (0.2 μM DOX 3 days → 通常培地 3 days) した細胞 (DOX) を準備

  1. A549 細胞をμ-slide 8 well plate (ibidi 社) に播種し、37℃ CO2 インキュベーターで一晩培養した。(1 x 105 cells/ml の細胞懸濁液を200 µl 入れた)
  2. 上澄みを取り除き、PBS で1回洗浄後、4% パラホルムアルデヒド (PFA) / PBS 溶液を添加し、室温で30 分間固定化した。
  3. 上澄みを取り除き、細胞をPBS で1 回洗浄した。
  4. McIlvaine buffer (pH 6.0) で調製した15 μM SPiDER Blue + 0.1 µM Lipi-Deep Red を添加し、 37℃で30 分間インキュベートした。
    *5% CO2 インキュベーターは使用しない
  5. 上澄みを取り除き、PBS で1 回洗浄後、PBS を200 µl添加し共焦点レーザー顕微鏡 (60 倍率) で観察した。

実験例:蛍光プレートリーダーでの数値化解析

*事前に、通常培地で培養した細胞 (CTRL) と、DOX 処理 (0.2 μM DOX 3 days → 通常培地 3 days) した細胞 (DOX) を準備

  1. A549 細胞を96 well Black Plate (クリアボトム) に播種し、37℃ CO2 インキュベーターで一晩培養した。(1 x 105 cells/ml 細胞懸濁液を200 µl 加えた)
  2. 上澄みを除去し、PBSを 100 μl 添加し、細胞を洗浄した。
  3. 4% PFA/PBS 溶液を100 μl 添加し、室温で30 分間静置した。
  4. 上澄みを除去し、PBSを 100 μl 添加し、細胞を洗浄した。
  5. 15 µmol/l SPiDER Blue 溶液 (キット付属のAssay Bufferに希釈した) を100 μl 添加し、37℃で30 分間インキュベートした。
  6. 上澄みを除去し、PBSを 100 μl 添加し、細胞を洗浄した。
  7. 5 µmol/l DRAQ5 溶液 (PBS) を100 μl 添加し、37℃で5 分間インキュベートした。上澄みを除去し、PBSを 100 μl 添加し、細胞を洗浄し蛍光プレートリーダーで測定した。細胞数による補正のため、 DRAQ5 を使用し核酸染色を行い、蛍光値を測定した。(下方励起、下方蛍光測定)
  8. 上澄みを除去し、PBSを 100 μl 添加し、細胞を洗浄した。
  9. Lysis Buffer*1 100 μl を各ウェルに添加し、室温で10 分間インキュベートした。
  10. Stop Solution*2 100 μl を各ウェルに添加した。
  11. 蛍光プレートリーダーでSPiDER Blueのシグナルを検出した。 (上方励起、上方蛍光測定)
*1 Lysis Buffer: 20 mMクエン酸, 40 mM リン酸緩衝液 pH 6.0, 0.05% NP-40
*2 Stop Solution: 0.5 M 炭酸ナトリウム-重炭酸ナトリウム緩衝液 pH 10.0
実験例:蛍光プレートリーダーでの数値化解析

*N=3
*DRAQ5 の蛍光値でノーマライズ

<検出条件>

  • SPiDER Blue: Ex/Em = 405/460 nm
  • DRAQ5: Ex/Em = 633/681 nm

実験例:老化マウス肝臓脂肪組織切片の染色(SPiDER-βGalとの比較)

  1. 8 週齢、35 週齢のマウス肝臓脂肪組織 (凍結切片) をスライドガラスに貼付したサンプルを準備した。
  2. PBS で1回洗浄後、4% パラホルムアルデヒド (PFA) / PBS 溶液を200 µl 添加し、室温で30 分間固定化した。
  3. 上澄みを取り除き、PBS で1 回洗浄した。
  4. McIlvaine buffer (pH 6.0) で調製した15 µM SPiDER Blue、15 µM SPiDER-βGal を200 µl 添加し、 37℃で2 時間インキュベートした。
  5. 上澄みを取り除き、PBS で1 回洗浄した。
  6. 封入剤 (ProLong Glass Antifade Mountant, Thermo) を1 滴添加し、カバーガラスで封入した。
  7. 共焦点レーザー顕微鏡 (40 倍率) で観察した。
実験例:老化マウス肝臓脂肪組織切片の染色(SPiDER-βGalとの比較)

[検出条件]

  • SPiDER Blue 検出波長: 405 nm (Ex), 500–600 nm (Em), 2.0%, 700V
  • SPiDE-βGal 検出波長: 488 nm (Ex), 500–600 nm (Em), 1.0%, 600V

Q&A

Working solution (20 mmol/l SPiDER Blue をAssay Buffer で希釈したもの)は、どのくらい安定ですか?
Working solutionは保存できないため、用時調製して下さい。
染色後サンプルを保存し後日観察したいのですが、可能ですか?
A549細胞にDOX処理した老化細胞を15 μM SPiDER Blueで染色した後に、4℃で3日保存したサンプルを観察した実績がございます。
落射型顕微鏡でも観察可能ですか?
可能です。落射型顕微鏡(KEYENCE社)での観察実績がございます。

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生細胞・固定化細胞の老化細胞検出(緑色)

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