抗腸内細菌抗体
ヒトの腸内には細菌をはじめとするさまざまな種類の微生物が存在しており、生息環境に適応した多様なマイクロバイオータ (腸内細菌叢) を形成しています。マイクロバイオータの構成や代謝産物はがん、糖尿病、肥満、アレルギー、神経精神疾患などさまざまな疾患に関与することが報告されており、ヒトの健康との関連が注目されています。腸内細菌の解析は主に次世代シークエンス (NGS) が利用されていますが、労力やコストが課題となっています。
当社では、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 國澤 純 先生、吉井 健 先生らによって開発されたフォカエイコラ・ブルガタス (旧名 バクテロイデス・ブルガタス)、フィーカリバクテリウム・ダンカニエ (旧名 フィーカリバクテリウム・プラウスニッチ)、セガテラ・コプリ (旧名 プレボテラ・コプリ)に対する抗腸内細菌モノクローナル抗体1)を製品化しました。これらの抗体はELISA、フローサイトメトリー、免疫沈降、ウエスタンブロッティングに使用することができ、腸内細菌の迅速・簡便・安価な測定に貢献することが期待されます。
腸内細菌抗体 開発の背景
ヒトの腸内には細菌をはじめとするさまざまな種類の微生物が存在しており、生息環境に適応した多様なマイクロバイオータ (腸内細菌叢) を形成しています。マイクロバイオータの構成や代謝産物はがん、糖尿病、肥満、アレルギー、神経精神疾患などさまざまな疾患に関与することが報告されており、ヒトの健康との関連が注目されています。
特に日本人に多く存在する腸内細菌としてフォカエイコラ・ブルガタス、フィーカリバクテリウム・ダンカニエ、セガテラ・コプリなどが知られています。これらの細菌の構成比を調べ、腸内細菌叢のエンテロタイプを特定することで、対象の腸内環境を理解することができます。このような腸内細菌の解析は主に次世代シークエンス (NGS) が利用されていますが、労力やコストが課題となっています。
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 國澤 純 先生、吉井 健 先生らの研究グループは迅速・安価で簡便な腸内細菌の検出法の開発に取り組み、上記の腸内細菌を認識するモノクローナル抗体を開発しました1)。それぞれの細菌をマウスに直接免疫するノンターゲット戦略により各種細菌を認識することができます。
製品ラインアップ
当社では以下3種類の腸内細菌に対する抗体をラインアップしています。
腸内細菌 | フォカエイコラ・ブルガタス (Phocaeicola vulgatus) |
フィーカリバクテリウム・ダンカニエ (Faecalibacterium duncaniae) |
セガテラ・コプリ (Segatella copri) |
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細菌の概要 |
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コードNo. | 013-28931 | 010-28941 | 017-28951 | 012-28901 | 019-28911 | 016-28921 | 014-28961 | 011-28971 |
クローンNo. | PV-L2B7-117K1 | PV-L1A6-117K2 | PV-S10F7-14K1 | FD-S2D3-18K1 | FD-L4F6-18K2 | FD-L5B6-33K2 | SC-S10C3-49K1 | SC-L10B5-35K1 |
サブクラス | IgG2b | IgG2b | IgG3 | IgG2b | IgG2b | IgG2b | IgG2a | IgG2a |
免疫動物 | マウス | |||||||
組成 | 1 x D-PBS、0.05% アジ化ナトリウム | |||||||
アプリケーション | ELISA (ダイレクト/サンドイッチ※)、フローサイトメトリー、免疫沈降、ウエスタンブロッティング |
※ 017-28951のみサンドイッチELISAのアプリケーションはございません。
<写真提供> 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 國澤先生データ
サンドイッチELISAによる各種腸内細菌の定量とNGS (16S rRNA遺伝子) との比較
ヒト糞便 3検体について、抗腸内細菌抗体を組み合わせたサンドイッチELISAにより菌数を測定した。またサンドイッチELISAとNGSによる16S rRNA遺伝子のアンプリコンシークエンスで得られた腸内細菌の構成比を比較した。
- サンドイッチELISAの構成
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(1) P. vulgatus
捕捉抗体: PV-L1A6-117K2
検出抗体: PV-L2B7-117K1(2) F. duncaniae
捕捉抗体: FD-S2D3-18K1
検出抗体: FD-L4F6-18K2(3) S. copri
捕捉抗体: SC-S10C3-49K1
検出抗体: SC-S10C3-49K1
腸内細菌数の測定 (サンドイッチELISA)

- Phocaeicola vulgatus
- Faecalibacterium duncaniae
- Segatella copri
NGS (16S rRNA遺伝子) との比較

- Phocaeicola vulgatus
- Faecalibacterium duncaniae
- Segatella copri
ELISA
96ウェルマイクロプレートに細菌溶液100 μLを添加し、コーティングした。細菌溶液は凍結乾燥した熱殺菌細菌をPBSで希釈する、もしくはB-PER溶液に懸濁し、ガラスビーズで破砕することで調製した。抗原固相化プレートのブロッキングおよび洗浄を行った後、ハイブリドーマ 各クローンの細胞培養上清を添加し、2時間インキュベートした。抗原に結合した抗腸内細菌抗体はHRP標識ヤギ抗マウスIgGを用いて検出した。

- P. vulgatus
- F. duncaniae
- S. copri
- B. pseudocatenulatum
- B. longum
- B. wexlerae
- A. muciniphila
フローサイトメトリー
細菌をファーマー固定液 (エタノール:酢酸=7:3) で固定後、遠心分離(13,040 x g, 2分, 4 °C) を行った。細菌 100 μLと抗腸内細菌抗体 1 μgを1% BSAを含むPBS-Tに懸濁し、氷上で1時間インキュベートした。細胞を洗浄後、FITC標識抗マウスIgGを添加し、30分間、氷上、暗所で反応させた。染色された細菌を洗浄し、フローサイトメーターで解析した。
Anti-P. vulgatus


Anti-F. duncaniae



Anti-S. copri


データは著作者の許諾を得て、文献1)を元に作成
ウエスタンブロッティング
各腸内細菌を10,000 x gで5分間 遠心分離して回収後、タンパク質 2 µgをSDS-PAGEにて分離した。分離したタンパク質はPVDF膜に転写し、ブロッキング後、25-50 ng/mLの抗腸内細菌抗体およびHRP標識マウスIgGを用いて検出した。

サンプルは以下、腸内細菌の抽出液を使用
P. vulgatus : Phocaeicola vulgatus JCM5826
F. duncaniae : Faecalibacterium duncaniae JCM31915
S. copri : Segatella copri JCM13464
データは著作者の許諾を得て、文献1)を元に作成
参考文献
- Yoshii, K. et al.: Sci. Rep., 15(1), 1(2025).
Establishment of enterotype-specific antibodies for various diagnostic systems
製品一覧
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抗フォカエイコラ抗体
抗フィーカリバクテリウム抗体
抗セガテラ抗体
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