自動抽出機器に対応したハイスループットな細胞外小胞/エクソソーム単離・精製キット

MagCapture™ EV Isolation Kit PS for HTS

エクソソームをはじめとする細胞外小胞 (EV: Extracellular Vesicle) は、生体において不要な物質の排出に関わるだけでなく、細胞間のコミュニケーションツールとして利用されています。EVの性質やその内包物 (核酸、タンパク質、脂質など) は分泌する細胞によって異なることが知られており、疾患に関連する細胞由来のEVやその内包物をバイオマーカーとして、体液検体から疾患を診断する、いわゆる「リキッドバイオプシー」に応用しようという試みがなされています。

リキッドバイオプシーの開発やその実用化のためには、多数の検体から効率よくEVを単離・精製できることが求められます。しかしながら、超遠心分離法をはじめとする従来の手法では、一度に処理できる検体数が限られており、多検体からEVを単離・精製するには大きな労力がかかっていました。

そのため当社は核酸やタンパク質抽出に使用されている自動抽出機器 (Thermo Fisher Scientific社 KingFisher™ Flexなど) に対応した、EVの単離・精製キット「MagCapture™ EV Isolation Kit PS for HTS」を開発いたしました。本キットは金沢大学 華山教授と共同で開発した独自のEV単離・精製技術であるPSアフィニティー法1)を採用しており、自動抽出機器を用いて一度に最大96検体から高純度かつダメージの少ないEVを単離・精製することが可能です。

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製品概要

MagCapture™ EV Isolation Kit PS for HTSは、自動抽出機器 (Thermo Fisher Scientific社 KingFisher™ Flexなど) に対応したPSアフィニティー法による細胞外小胞 (EV) の単離・精製キットです。一度に最大96サンプルからエクソソームなどのEVを単離・精製することが可能で、EVを利用したバイオマーカーの探索やハイスル―プットスクリーニング (HTS) に最適です。

特長

  • 自動抽出機器を用いて、一度に最大96サンプルからEVの単離・精製が可能
  • 独自の単離・精製技術である「PSアフィニティー法」により、高純度かつダメージの少ないEVを単離

対応する自動抽出機器およびサンプル

自動抽出機器 対象サンプル (使用が確認できたもの) 最大処理サンプル数 サンプル容量
KingFisher™ Flex (Thermo Fisher Scientific社) 細胞培養上清/血清/血漿/尿 96 (96ディープウェルプレート) ~1 mL
24 (24ディープウェルプレート) 1~5 mL
Maxwell® RSC Instrument (Promega社) 血清 16 ~1 mL
Maxwell® RSC 48 Instrument (Promega社) 血清 48 ~1 mL
Auto-Pure Mini (バイオメディカルサイエンス) 細胞培養上清/血清 16 ~1 mL

Maxwell®はPromega Corporationの商標または登録商標です

マニュアルキット (MagCapture™ Exosome Isolation Kit PS Ver.2) との違い

本製品はマニュアルの単離・精製キット (MagCapture™ Exosome Isolation Kit PS Ver.2, コードNo. 290-84103) と比較して、以下のような違いがあります。なおEVの回収効率は同程度です。(「性能データ」参照)

自動抽出
(MagCapture™ EV Isolation Kit PS for HTS)
マニュアル抽出
(MagCapture™ Exosome Isolation Kit PS Ver.2)
Tim4と磁気ビーズの結合方法 磁気ビーズに直接結合
(磁気ビーズとTim4の結合ステップが不要)
ビオチン-アビジン系を介して磁気ビーズに結合
(磁気ビーズとTim4の結合ステップが必要)
溶出バッファー中の
界面活性剤濃度
高い
(磁気ビーズのロスを抑制するため)
低い
溶出バッファー中の
EDTA濃度
高い
(溶出ステップの回数を減らすため)
低い

原理

PSアフィニティー法は、EVの表面に存在するホスファチジルセリン (PS) と特異的に結合するTim4タンパク質を利用した当社独自のEV単離手法です。
PS-Tim4結合の高い特異性とキレート剤によるマイルドな溶出で高純度なEVをインタクトな状態で単離できます。

  • 結合

    結合
  • 溶出

    溶出

プロトコル

KingFisher™ FlexによるEVの単離・精製 (アフィニティー反応から溶出まで一連処理する場合)

サンプル
前処理
[マニュアル]
Step
01
サンプル前処理
サンプルを遠心分離し夾雑物等を沈殿させ、上清を採取する
バッファー
調製
[マニュアル]
Step
02
バッファー調製
EV Washing Buffer (1x) およびEV Elution Buffer (1x) をそれぞれ調製する
プレート
準備
[マニュアル]
Step
03
サンプル調製
1.5 mLマイクロチューブにサンプル (最大1 mL/アッセイ) を分注し、EV Binding Enhancerを添加する
Step
04
プレート準備
以下7種類のプレートをそれぞれ準備する。
プレート名称(例) 準備
(1) Tip1 96 deep well plateにTip combをセット
(2) DWP1_Beads 任意のウェルポジションにEV Capture Magnetic Beads 60 μLとEV Washing Buffer (1x) 940 μLを添加
(3) DWP2_sample (2)と同じウェルポジションにStep 03で調製したサンプル1 mLを添加
(4) DWP3_Washing (2)と同じウェルポジションにEV Washing Buffer (1x) を1 mL添加
(5) DWP4_Washing
(6) DWP5_Washing
(7) DWP6_Elution (2)と同じウェルポジションにEV Elution Buffer (1×)を100 μL添加
EV
単離・精製
[自動]
Step
05
装置・プログラムの立ち上げ
KingFisher™ Flexとソフトを立ち上げ、事前設定したプロトコルを作動させる
Step
06
処理プログラムの開始
プレートとチップをそれぞれ指定の場所にセットし、処理プログラムを開始する
Step
07
プレート・チップの回収
装置からプレートとチップを回収する。プレート「DWP6_Elution」に単離されたEV溶液が存在する

※ アフィニティー反応と溶出を別々のプログラムで実施し、溶出時に用いるTIP combを新しくすることで、サンプルに含まれる夾雑物質のキャリーオーバーを低減できる可能性がございます。詳細は取扱説明書をご覧ください。

自動抽出機器別のプロトコル詳細やプログラム設定例は製品詳細ページの取扱説明書をご覧ください。

【プロトコル】 MagCapture™ EV Isolation Kit PS for HTSを用いた多検体からの細胞外小胞精製
(Youtube 2:36)

【プロトコル】[Auto-Pure Mini編] MagCapture™ EV Isolation Kit PS for HTSを用いた多検体からの細胞外小胞精製
(Youtube 2:21)

【プロトコル】[Maxwell® RSC Instrument 編] MagCapture™ EV Isolation Kit PS for HTSを用いた多検体からの細胞外小胞精製
(Youtube 3:07)

データ

KingFisher™ FlexによるEV単離・精製

NTAによるマニュアルキット (MagCapture™ Exosome Isolation Kit PS Ver.2) との粒子数比較

血清、ヘパリン血漿、尿、細胞培養上清 (COLO201) から、MagCapture™ EV Isolation Kit PS for HTS (Auto) およびMagCapture™ Exosome Isolation Kit PS Ver.2 (Manual) を用いてEVを単離・精製した。EVの粒子数はNanoparticle Tracking Analysis (NTA) にて確認した。

NTAによるマニュアルキット(MagCapture Exosome Isolation Kit PS Ver.2)との粒子数比較

[結果]
MagCapture™ EV Isolation Kit PS for HTSでも、マニュアルキットと同程度の粒子数を得た。

ELISAによるマニュアルキットとのEV回収率比較

血清、ヘパリン血漿、尿、細胞培養上清 (COLO201) から、MagCapture™ EV Isolation Kit PS for HTS (Auto) およびMagCapture™ Exosome Isolation Kit PS Ver.2 (Manual) を用いてEVを単離・精製した。EVの回収率はPS Capture™ Exosome ELISA Kit (Streptavidin HRP) (コードNo. 298-80601) にて確認した。

ELISAによるマニュアルキットとのEV回収率比較
ELISAによるマニュアルキットとのEV回収率比較

[結果]
MagCapture™ EV Isolation Kit PS for HTSでも、マニュアルキットと同程度の回収率を得た。

マニュアルキットとのプロテオミクス解析の比較

MagCapture™ EV Isolation Kit PS for HTS (Automatic/Automated) およびMagCapture™ Exosome Isolation Kit PS Ver.2 (Manual) を用いて、ヒト血清 200 μLからEVを単離・精製した。回収したEV溶液のプロテオミクス解析を行った。

(1) 同定したタンパク質の種類

(1) 同定したタンパク質の種類

[結果]
MagCapture™ EV Isolation Kit PS for HTSでは、4回の試行において共通して同定できるタンパク質の数がマニュアルキットと比べて多く、再現性がより高いことが示唆された。

(2) EVマーカータンパク質の量

(2) EVマーカータンパク質の量

[結果]
MagCapture™ EV Isolation Kit PS for HTSとマニュアルキットでそれぞれ単離したEVに含まれるEVマーカータンパク質量に有意差はなく、自動化はEVの収率に影響しなかった。

(3) 非EVマーカー (アルブミン) の量

(3) 非EVマーカー(アルブミン)の量

[結果]
MagCapture™ EV Isolation Kit PS for HTSでは、マニュアルキットと比べて非EVマーカーであるアルブミンの量が少なく、より不純物の少ないEVを回収できていることが示唆された。

Maxwell® RSC InstrumentによるEV単離・精製

マニュアルキットとの回収率比較

ヒト血清からMagCapture™ EV Isolation Kit PS for HTS (Auto) およびMagCapture™ Exosome Isolation Kit PS Ver.2 (Manual) を用いてEVを単離・精製した。EVの回収率はPS Capture™ エクソソームELISAキット (ストレプトアビジンHRP) で測定した。

Maxwell® RSC InstrumentによるEV単離・精製 -- マニュアルキットとの回収率比較

[結果]
MagCapture™ EV Isolation Kit PS for HTSでも、マニュアルキットに近い回収率を示した。

Auto-Pure MiniによるEV単離・精製

マニュアルキットとの回収率比較

ヒト血清および細胞培養上清 (COLO201) からMagCapture™ EV Isolation Kit PS for HTS (Auto) およびMagCapture™ Exosome Isolation Kit PS Ver.2 (Manual) を用いてEVを単離・精製した。EVの回収率はPS Capture™ エクソソームELISAキット (マウスIgG POD) で測定したCD9とCD63のシグナルから算出した。

ヒト血清
細胞培養上清(COLO201)

[結果]
MagCapture™ EV Isolation Kit PS for HTSでも、マニュアルキットと同程度の回収率を得た。

ライセンスについて

本製品は研究用途でご使用ください。営利・商業目的にご使用される場合には、当社(ffwk-labchem-tec@fujifilm.com)までお問い合わせください。

受託サービスについて

当社では、MagCapture™ EV Isolation Kit PS for HTSとThermo Fisher Scientific社 KingFisher™ Flexを使用した多検体からのEV精製受託サービスを行っております。多検体からのEV精製を行いたいが、自動抽出機器をお持ちでないお客様は是非、本サービスをご利用ください。

参考文献

製品一覧

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MagCapture™ EV Isolation Kit PS for HTS

関連製品一覧

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10 mL以下の細胞培養上清および体液検体からのEV単離・精製に適しています

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