サイトカイン/成長因子
サイトカインは主に免疫系細胞から分泌されるタンパク質です。細胞表面に存在する受容体と結合することで細胞間のシグナル伝達を行い、細胞の増殖、分化、細胞死、機能発現など多様な生理作用を引き起こします。
免疫や炎症に関係した物質が多く、種々の増殖因子や抑制因子があります。好中球、単球、マクロファージなど、白血球が傷害部位に集まるための走化性サイトカインをケモカインといいます。サイトカインにはケモカインを含む炎症性サイトカインと炎症性サイトカインの産生を抑制する作用を持つ抗炎症性サイトカインがあります。
学術コンテンツ
サイトカインの主な分類
サイトカインは、その作用に基づいて、インターロイキン、インターフェロン、造血因子、TNFファミリー、細胞増殖因子などに分類されます。
それぞれの役割、作用は以下の通りです。
インターロイキン
インターロイキンは、リンパ球や単球、マクロファージなどの白血球から産生され、細胞間の情報伝達に関与するサイトカインです。「細胞間 (inter-) 」と「白血球 (leukocyte) 」に由来し、現在までに30種類以上が同定されています。これらは発見順に番号が付けられ、一部はケモカイン (IL-8) やインターフェロン (IL-28/29) など他のサイトカインにも分類されます。各インターロイキンは産生細胞から分泌され、標的細胞の表面にある主にⅠ型サイトカイン受容体に結合します。受容体は複数のサイトカインで共有されるものや特異的なものがあり、ヘテロ二量体やホモ二量体などの構造を形成してインターロイキンと相互作用します。これにより、T細胞やB細胞の活性化、抗体産生の促進、細胞の分化・増殖、炎症の誘導や抑制など多様な生理作用が引き起こされます。

インターフェロン
インターフェロンは、ウイルスや病原体、腫瘍細胞などの異物侵入に応答して生体内で産生されるタンパク質です。ウイルス増殖を抑制する因子として発見され、ウイルス干渉因子 (Interference Factor) の意味から「Interferon (IFN) 」と名付けられました。IFNの産生は、ウイルス由来の二本鎖RNAやLPSによるToll様受容体 (TLR) の刺激、さらにIL-1、IL-2、IL-12、TNF、コロニー刺激因子などのサイトカインによって誘導されます。IFNは受容体を介して抗ウイルス作用 (抗ウイルスタンパク質酵素の産生) 、腫瘍増殖抑制、マクロファージ活性化による免疫調節などの生理機能を発揮します。

造血因子
造血幹細胞は、白血球、赤血球、血小板など造血系の細胞すべてに分化する多能性を持っており、ヒトでは主に骨髄に存在します。SCF、IL-3. GM-CSF、IL-6、IL-11、G-CSFなどの造血因子は、造血初期に作用して造血幹細胞から、造血前駆細胞や各系列前駆細胞へと増殖分化を促進する因子として知られています。EPO、G-CSFはすでに臨床に使われており、GM-CSFは掛状細胞の増幅に使われるなど造血因子は臨床への応用も進んでいます。

TNFファミリー
腫瘍壊死因子 (Tumor Necrosis Factor. TNF) は、固形がんに対して出血性の接死を誘導する因子として発見されたサイトカインです。TNFファミリーにはTNF-α、リンフォトキシンαなど20種類近くの困子が同定されており、TNFSF (TNF Super Family) と番号を組合わせた体系的に命名されています。TNFファミリーのサイトカインは、膜1回貫通型タンパク質 (N末:細胞内、C未:細胞外) として産生され、ホモ三量体の形で膜型リガンドとして機能します。ただしリンフォトキシンαは細胞外領域でプロテアーゼ切断を受け、可溶性ホモ三量体として産生されます。

細胞増殖因子
細胞増殖因子は、細胞の増殖、分化などの刺激に応答して生体内で産生されるタンパク質です。細胞分裂や成長を促進する因子として発見され、細胞表面にある特定の受容体に結合することで、細胞の内部へシグナルを伝達します。細胞増殖因子の産生は、組織の損傷や局所の虚血、さらにIL-1、IL-6、TNFなどのサイトカインや他の成長因子によって誘導されます。細胞増殖因子は受容体を介して皮膚のターンオーバー (EGF)、血管新生 (VEGF)、コラーゲン合成 (FGF)、細胞生存や組織再生 (HGF) などの生理機能を発揮します。

TGF-βファミリー
TGF-βファミリーは、Ⅱ型受容体及びⅠ型受容体に続くSmad活性化を主としたシグナル伝達を介してさまざまな生理作用を発現します。多細胞生物では、個々の細胞の増殖・遊走・分化など多彩な活動が、細分化された細胞間シグナル伝達によって制御されています。TGF-βファミリーに分類される各因子は、生物の発生段階から成熟体の恒常性維持・疾病など多彩な生体プロセスの制御に関与しています。

発生に関わる因子
発生に関わる因子は、個体の初期発生において細胞の増殖・分化、組織のパターン形成を促すシグナル伝達タンパク質です。濃度勾配を形成して細胞の運命を位置依存的に決定する因子として発見され、細胞表面の受容体に結合してシグナルを伝達します。これらの産生は、原腸陥入や神経管形成などの発生の進行に伴い、形成体などからのシグナルによって誘導されます。受容体を介して、頭部形成の制御 (DKK-1によるWnt阻害) 、神経管の背腹軸形成 (Wnt-1) 、前脳や四肢指のパターン形成 (Shh) などの生理機能を発揮します。
ケモカイン
ケモカインは、炎症や免疫応答などの刺激に応答して生体内で産生されるタンパク質です。白血球を特定の場所へ遊走させる因子として発見され、「趨化性サイトカイン」からChemokineと名付けられました。その産生は、細菌成分 (LPS) のほか、IL-1やTNFなどのサイトカインによって誘導されます。Gタンパク質共役型受容体 (GPCR) を介して、白血球の遊走制御、リンパ組織の構築、免疫細胞の活性化などの生理機能を発揮します。
糖代謝系
レプチンなどの代謝調節因子は、生体のエネルギー恒常性や糖代謝の刺激に応答して分泌されるタンパク質です。脂肪細胞から分泌されて摂食を抑制する抗肥満因子として発見され、視床下部などの特定受容体に結合してシグナルを伝達します。その産生は、体脂肪の蓄積やインスリンなどのホルモン、TNF-αなどのサイトカインによって誘導されます。レプチンは受容体を介して、食欲の抑制、エネルギー消費の促進、糖代謝 (インスリン感受性) の調節などの生理機能を発揮します。


