NASH (MASH) 研究試薬
非アルコール性脂肪肝炎 (NASH) はアルコールやウイルスなどを原因としない脂肪肝である非アルコール性脂肪性肝疾患 (NAFLD) の一種です。2024年8月に日本語病名および定義が変更され、それぞれMASHおよびMASLDとも呼ばれてます。ライフスタイルの変遷や栄養過多に伴い、NAFLDの有病率は世界中で増加しており、有効な治療方法の開発が求められています。また診断においてはNASH/NAFLDのバイオマーカーを確立することも重要な課題です。 当社では、NASH/NAFLDの治療薬や診断マーカーの開発に役立つアッセイキットなどをラインアップしております。
脂肪肝/NASHを再現したヒト3Dミニ肝臓®も取り扱っています
当社ではサイフューズ社のヒト3Dミニ肝臓®を取り扱っています。本製品はヒトプライマリー肝実質細胞およびヒト肝星細胞を3D組織化しているため、ヒト組織と形態的類似性を示し、より生体に近い状態を再現しています。脂肪肝やNASH (MASH) を再現したモデルもラインアップされており、ヒトの肝線維化を体外で再現したin vitroモデルとして、治療薬や機能性食品の開発にご使用いただけます。
学術コンテンツ
NASH (MASH) とは?
(NAFLD/NASH 診療ガイドライン2014 より作成)
非アルコール性脂肪肝炎 (NASH: Nonalcoholic Steatohepatitis) はアルコールやウイルスなどを原因としない脂肪肝である非アルコール性脂肪性肝疾患 (NAFLD: Nonalcoholic Fatty Liver Disease) の一種です。進行性で肝硬変や肝癌の発症につながる疾患をNASH、病態が進行しないものを単純性脂肪肝 (NAFL: Nonalcoholic Fatty Liver) と呼びます (図1)。なおNASHおよびNAFLDは2024年8月に日本語病名および定義が変更され、それぞれMASHおよびMASLDと呼称することが発表されました1)。一方で、診断基準の変更などは検討が続いているため、本ページでは原則NASH/NAFLDと表記します。
ライフスタイルの変遷や栄養過多に伴い、NAFLDの有病率は世界中で増加しており、世界人口の約20~30%がNAFLDを罹患していると推定されています。その中で約10~20%がNASH を患っており、NASH患者の約20%が高度な肝線維症を発症し、肝硬変および肝癌のリスクが上昇しているとされています2)。診断方法としては、血液検査での血清フェリチン値、炎症反応を表すCRP値、血清肝線維化マーカーを測定したうえで、肝生検を行うことで確定診断となります。
NASHの発症と進行
NASHは、肝臓での脂肪の異常蓄積、炎症、肝細胞損傷を特徴とします。その病態メカニズムは完全には明らかにされていませんが、脂肪毒性、インスリン抵抗性、酸化ストレス、アポトーシス、鉄負荷、サイトカイン、腸内細菌など様々な因子が関与していることが示唆されています。
その中でも、糖尿病と肥満はNAFLDおよびNASHの最も強力な危険因子であり、特にインスリン抵抗性と肝線維化の関係は様々な研究が行われています。インスリン抵抗性は脂肪分解による脂肪酸の放出を促進し、炎症や線維化を進行させます。なお、脂肪組織から放出されるアディポネクチン、IL-6およびその他のペプチドは、肝臓において炎症促進の効果と保護効果の両方を持っています。肥満のマウスを使用したレプチン療法は、カロリー摂取量を減らし、脂肪肝を解消し肝臓のインスリン作用を改善した報告があります。グルカゴン様ペプチド (GLP-1) は、インスリン分泌を刺激してグルカゴンの分泌を阻害する腸内ホルモンであり、NASH改善に寄与する物質として注目されています3) 。
肝細胞が傷害を受けるとDAMPs (Damage Associated Molecular Patterns) と称される傷害シグナルが発せられ、炎症反応が誘導されます。これにより、TGF-βやIL-1β、IL-6、TNF-α、MCP-1などの様々なサイトカイン、ケモカインが放出され、ビタミンA の貯蔵を担っている肝星細胞に作用し、活性化を誘導します。肝星細胞は活性化すると、α-SMAを発現する筋線維芽細胞様に表現型を変化させ、コラーゲンなどのECMを過剰に生産するようになります。現在、活性化肝星細胞の脱活性化誘導による肝線維化治療法の研究が盛んに行われていますが、肝星細胞の活性化機序が多岐にわたるため、十分にこれを抑え込む治療法は存在していません。
NASHの診断
| 診断手法 | 検査項目 |
|---|---|
| NFS | 年齢、BMI、高血糖、血小板数、 アルブミン、ALT、AST |
| FIB-4 | 年齢、ALT、AST、血小板数 |
| ELF | ヒアルロン酸、PIIINP、TIMP-1 |
NASHの診断は、肝生検による組織学的分析がゴールドスタンダードですが、その侵襲的な性質、サンプリングのばらつき、および合併症の可能性により、バイオマーカーの開発が強く求められています。予測スコアとしてNFS (NAFLD Fibrosis Score) やFIB-4 (Fibrosis-4)、ELFスコア (Enhanced Liver Fibrosis Score) などが開発され (表1)、NAFLDの病期分類が行われていますが、パフォーマンスは集団によって異なり、不確定な結果がしばしば報告されています4)。
日本ではヒアルロン酸、4型コラーゲン7s、PIIINP (Procollagen III Aminoterminal Peptide) 、M2BPGi (Mac-2 結合タンパク糖鎖修飾異性体) 、オートタキシンが肝線維化マーカーとして保険適用されており、NAFLDの線維化進行症例診断への有用性が報告されています。
参考文献
- 一般財団法人日本消化器学会: https://www.jsge.or.jp/news/20240820-3/?_fsi=ihRE4ghK&_fsi=MEBtvwvp (2025年5月9日閲覧)
- Samuel, V. T., Shulma, G. I.: Cell Metab., 27 (1) , 22 (2018) .
Nonalcoholic Fatty Liver Disease as a Nexus of Metabolic and Hepatic Diseases - Friedman, S. L. et al.: Nat Med., 24 (7) , 908 (2018) .
Mechanisms of NAFLD development and therapeutic strategies - Corey, K. E. et al.: J. Hepatol., 76 (1) , 25 (2022) .
ADAMTSL2 protein and a soluble biomarker signature identify at-risk non-alcoholic steatohepatitis and fibrosis in adults with NAFLD
