マウス・ラットモノクローナル抗体作製受託(DNA免疫法)

通常の抗体作製は、ペプチドや精製されたタンパク質を抗原とし、動物に免疫して作製しますが、『DNA免疫法』は⽬的タンパク質の遺伝⼦を組み込んだ発現ベクターを動物に導入し、動物の体内で発現させて、その目的タンパク質を抗原として抗体を作製する技術です。
抗原を動物体内で発現させるため、抗原のネイティブフォームを認識する、機能抗体の取得が期待できます。
当社は、マウス・ラットの細胞融合法によるモノクローナル抗体作製だけでなく、富士フイルムグループ独自技術(公開番号:WO2024071374)を用いたB-cell screening技術により、効率的にウサギモノクローナル抗体を作製することが可能です。
DNA免疫法をウサギモノクローナル抗体とかけ合わせることで、両者の特長を持つ「高機能性×高親和性」抗体の取得が期待できます。抗体医薬や診断薬に向けた次世代抗体としてご利用ください。
DNA免疫法による抗体作製の特長
- 精製抗原を調製する必要がありません。
- ネイティブフォームのタンパク質を認識する抗体作製が可能です。
- 複数回膜貫通型タンパク質に対する抗体作製の実績が多数あります。
DNA免疫法による抗体取得の原理
DNA免疫法は、抗体作製法のひとつです。この方法では、ターゲット抗原のcDNAを含む発現ベクターを作製し、それを免疫動物に直接投与します。投与されたターゲット抗原のcDNAは、ベクター内のプロモーターによって転写され、免疫動物の体内でターゲット抗原が発現し、免疫原として作用します。
従来のタンパク質やペプチドを用いた免疫法と比較して、「抗原タンパク質・ペプチドの調製が不要」「抗原のコンタミネーション(混入)のリスクがない」「抗原が変性しない」「ターゲット抗原の改変が容易」といった利点があります。
さらに、DNA免疫法は、従来の免疫法では抗体の取得が難しかった膜タンパク質や精製が困難な抗原に対しても、高い抗体取得率が得られる点で優れています。また、中和抗体(機能性抗体)を取得しやすい点も特長のひとつです。

当社DNA免疫法受託サービスの優れている点
1. 免疫増強タグの使用
発現させる抗原の免疫原性を高める特殊な配列をベクターに組み込みます。
2. 効率的なDNAデリバリー
免疫動物への免疫⽅法により、免疫効率は大きく異なります。当社ではベクターの設計だけでなく、免疫⽅法も最適化しています。
3. ネイティブフォーム抗原を用いたcell-baseスクリーニング
ターゲット抗原を表面に発現させた細胞を作製し、cell-baseスクリーニングを実施します。
過去のDNA免疫による抗体作製受託サービスにおける実績(~2024年3月末)
当社での受託実績をターゲットタンパク質の種類別に表にまとめました。
全体として、膜タンパク質など従来のタンパク質抗原免疫法では難しいターゲットにおいて、高い抗体取得率を得られています。特に、複数回膜貫通型の膜タンパク質をターゲットとする抗体作製のご依頼を多くいただいています。
Protein Type/Localization | Projects | 成功率(%) |
---|---|---|
分泌タンパク質 | 17/19 | 89.5 |
膜タンパク質(タイプ I 型) | 56/60 | 93.3 |
膜タンパク質(タイプ II 型) | 7/9 | 77.8 |
膜タンパク質(GPI-アンカー 型) | 8/8 | 100 |
膜タンパク質(複数回膜貫通 型) | 51/66 | 77.3 |
細胞内、核タンパク質 | 5/6 | 83.3 |
ウイルス由来タンパク質 | 2/3 | 66.7 |
Total success rate: | 146/171 | 85.40% |
※マウス・ラットのみの実施
DNA免疫法を用いて作成した当社抗体製品
抗Claudin-5抗体
Claudin-5 は主に血液脳関門に発現する約 23kDa の4回膜貫通タンパク質です。
本製品はNative formのClaudin-5 に対するモノクローナル抗体で、Claudin-5 の中和活性 (血液脳関門モデルでのバリア機能を下げる作用) を示します。
Hashimoto, Y., et al.: J. Pharmacol. Exp. Ther., 363(2), 275 (2017).
抗CTGF抗体
CTGFはModule1-4の4つの部位からなり、全長免疫ではModule2に対する抗体のみ取得されます。
本製品は各Moduleに対する免疫コンストラクト設計し、DNA免疫を実施することで、それぞれのModuleに対する抗体を樹立しております。
Miyazaki, Osamu et al. :Annals of clinical biochemistry vol. 47,Pt 3 (2010)
DNA免疫法で取得した抗体とアプリケーション
DNA免疫法で作製された抗体の実験アプリケーションには向き不向きがあります。 DNA免疫法によって得られる抗体は、ネイティブフォームの非変性タンパク質を認識するため、非変性タンパク質の検出に適しています。例えば、プルダウンアッセイ、ELISA、フローサイトメトリー、抗体アレイです。治療・診断を視野に入れた抗体取得にも向いています。
しかしながら、変性タンパク質抗原は認識しないケース多いため、還元条件におけるウエスタンブロット用抗体としては適していません。SDS-PAGEにおける還元剤の作用によって、サンプル中のタンパク質が変性するため、DNA免疫法で得られる「タンパク質のネイティブな立体構造を認識する抗体」が反応しなくなります。

サービスの流れ

Feasibility Study抗体作製戦略の立案
ご依頼いただいた配列情報や使⽤⽬的を元に、ターゲットの構造および性質を分析し、抗体作製戦略を提案させていただきます。 最適な免疫領域および免疫⽅法、スクリーニン グ⽅法を報告書と共に提案させていただきます。
Milestone-1 哺乳細胞における抗原の発現解析
細胞表面での発現確認
上記Feasibility Studyで決定した内容に基づき、ターゲット遺伝子をin-house発現ベクターにクローニングし、免疫プラスミドを作製いたします。それを用いてターゲットの細胞表面での発現レベルを一過性強制発現細胞を⽤いたフローサイトメトリー解析により評価します。このステップでの発現レベルが、Milestone 2(免疫)への移行の重要な判断材料となります。発現確認には特異抗体等を用いて抗原の細胞膜上への発現を解析いたします。
Milestone-2 マウス・ラット免疫
動物への免疫
【修正】 作製した免疫用プラスミドを動物に免疫いたします。免疫方法は皮下免疫です。6~10週間にわたって免疫を行なった後に抗血清を回収します。抗体価をMilestone-1で作製した一過性強制発現細胞を用いてフローサイトメーターで評価します。
また、抗血清は個体ごとに回収し、オプションでお客様へ評価用サンプルとしてお送りします。
Milestone 3モノクローナル抗体の作製
Cell-base スクリーニング
モノクローナル抗体のスクリーニングは、一過性強制発現細胞を用いたフローサイトメトリーによる解析を行います。場合によってはお客様ご指定の細胞を用いて、解析作業/スクリーニングを実施いたします。なお、本スクリーニングに用いる発現ベクターもMilestone-2血清解析時に用いたものと同様、免疫に用いたものとは異なるtag配列が挿入されているものを用いるため、tagに対する抗体は除外されます。
最終的には、特異的反応性を示すハイブリドーマ細胞とその培養上清3 mLを納品させていただきます。
Milestone-4 抗体遺伝子の取得
樹立したハイブリドーマを増殖後、mRNAを抽出し、cDNAを合成します。5’RACE法により、H鎖とL鎖の両方で抗体遺伝子を増幅させ、抗体発現用カセットベクターへクローニングします。哺乳細胞で一過性発現させた培養上清を、フローサイトメトリーで抗原結合性試験を行います。抗原結合性が確認できた陽性クローンを、シーケンシングを行い、抗体遺伝子情報を取得します。
価格・納期
Feasibility Study
試験名 | 納期 | 希望納入価格 | |
---|---|---|---|
抗体作製戦略の立案 | 2週間 | 95,000円 |
Milestone-1 哺乳細胞における抗原の発現解析
試験名 | 納期 | 希望納入価格 | |
---|---|---|---|
哺乳細胞における抗原の発現解析 | 約1ヶ月 ※cDNA合成期間は含まない |
500,000円 ※2 cDNA合成を当社で実施する場合は別途費用が発生いたします。 ※抗原発現確認用の特異抗体を当社で調達する場合は別途費用が発生いたします。 |
Milestone-2 マウス・ラット免疫
試験名 | 納期 | 希望納入価格 | |
---|---|---|---|
Premium course | マウス9匹 | 2ヶ月~ | 1,500,000円 ※ターゲットが複数回膜貫通型タンパク質の場合、追加費用300,000円が発生いたします。 |
ラット9匹 | |||
Standard course | マウス6匹 | 2ヶ月~ | 1,250,000円 ※ターゲットが複数回膜貫通型タンパク質の場合、追加費用300,000円が発生いたします。 |
ラット6匹 | |||
Basic course | マウス3匹 | 2ヶ月~ | 1,000,000円 ※ターゲットが複数回膜貫通型タンパク質の場合、追加費用300,000円が発生いたします。 |
ラット3匹 |
Milestone-2 オプション
試験名 | 納期 | 希望納入価格 | |
---|---|---|---|
お客様所有の細胞株によるFCM解析 | - | 150,000円/株 | |
抗血清サンプル送付 | - | 30,000円/回 | |
リンパ節細胞ストックの作製 | - | 400,000円 ※Milestone-3へ移行する場合は100,000円となります。 |
|
脾臓の採取・送付(全匹実施) | - | 400,000円 |
Milestone-3 モノクローナル抗体の作製
試験名 | 納期 | 希望納入価格 | |
---|---|---|---|
ターゲットが複数回膜貫通型タンパク質の場合 ※細胞融合プレート10枚、6クローン |
2~3ヶ月 | 3,500,000円 | |
ターゲットが複数回膜貫通型タンパク質以外の場合 ※細胞融合プレート5枚、6クローン |
2~3ヶ月 | 3,000,000円 |
Milestone-3 オプション
試験名 | 納期 | 希望納入価格 | |
---|---|---|---|
細胞融合プレート枚数追加 | - | 150,000円/枚 | |
クローニングの追加 | - | 200,000円/クローン | |
培養上清の送付(24ウェル、6ウェルプレートの段階) | - | 30,000円/回 |
Milestone-4 抗体遺伝子の取得
試験名 | 納期 | 希望納入価格 | |
---|---|---|---|
抗体遺伝子の取得 | 約2ヵ月 | 800,000円/クローン |
納品物
- ハイブリドーマ
- 培養上清(3 mL)
- 報告書
- 抗体遺伝子情報(抗体遺伝子(ベクター)
※Milestone-4実施時
お見積り・ご注文について
よくある質問
取得される抗体について
- DNA免疫法によって得られた抗体はウエスタンブロッティングにも用いる事ができますか
- 遺伝子免疫で作製した抗体はネイティブフォームの抗原を認識していますので、変性タンパクには反応しない場合も多くあります。リニアなエピトープを認識する抗体が得られれば、ウェスタンに使用も可能ですが、得られるタンパク質に依存します。
- どのようなアイソタイプの抗体が取得されるのでしょうか
- 免疫動物の系統にもよりますが、マウスBalB/cの場合、IgG1が最も多く、IgG2a, 2bが取得される場合もあります。ラットWIstarの場合は、IgG2a, 2bが最も多く、IgG1が取得される場合もあります。
- 中和活性やADCC活性のある抗体は得られるのでしょうか
- 多くの実績はありますが、全てのプロジェクトで成功したわけではない旨、ご理解ください。
- 立体構造、指定した特定の領域を認識する抗体はできますか
- DNA免疫法では立体構造を認識する抗体が主に取得されます。また、ターゲットタンパク構造にもよりますが、指定した特定領域に対する抗体作製が可能な場合もありますのでご相談下さい。
- 作製された抗体の権利は誰が所有するのでしょうか
- 確立されたハイブリドーマを含め、全てお客様に帰属します。
- すでに周知の抗体とは異なるエピトープに対する抗体が欲しいのですが、取得可能ですか
- ターゲットの性状に応じて、競合がかからない抗体をスクリーニングすることが可能です。ターゲットに応じたストラテジーをご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。
作業工程について
- 免疫動物は何を用いているのですか
- 基本的に、マウス(BalB/c)・ラット(Wistar)を用いています。また、経験上、ラットの方が抗体価が上がりやすいことが分かっているため、ラットをより推奨しています。
過去にTGマウス、KOマウス等に免疫してモノクローナル抗体を作製した実績もあります。
- 抗体作製工程の中で、ユーザー評価を行えるでしょうか
- ご希望であれば、中間サンプルをご評価いただき、結果を反映したハイブリドーマクローン選抜等を行うことも可能です。
抗原について
- 遺伝子配列情報しかもっていないのですが、クローニングは行ってもらえますか
- クローニングは基本的に行っていません。遺伝子配列情報をもとに、cDNA合成を45円~/bp(合成する長さによって価格は異なります)で承っています。
- どのくらいのサイズのターゲットまで作製可能でしょうか
- 小さいものは約50アミノ酸(aa)、大きいものでは約1,000aa程度のターゲットタンパクの抗体作製に成功した実績があります。実際の受託では、個々のターゲットタンパク構造等に応じ、適した免疫領域をご提案しております。
- 掲載内容は本記事掲載時点の情報です。仕様変更などにより製品内容と実際のイメージが異なる場合があります。
- 掲載されている製品について
- 【試薬】
- 試験・研究の目的のみに使用されるものであり、「医薬品」、「食品」、「家庭用品」などとしては使用できません。
- 試験研究用以外にご使用された場合、いかなる保証も致しかねます。試験研究用以外の用途や原料にご使用希望の場合、弊社営業部門にお問合せください。
- 【医薬品原料】
- 製造専用医薬品及び医薬品添加物などを医薬品等の製造原料として製造業者向けに販売しています。製造専用医薬品(製品名に製造専用の表示があるもの)のご購入には、確認書が必要です。
- 表示している希望納入価格は「本体価格のみ」で消費税等は含まれておりません。
- 表示している希望納入価格は本記事掲載時点の価格です。