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【テクニカルレポート】Wakosil-II 5C18HG による尿中δ-アミノレブリン酸の測定

本記事は、和光純薬時報 Vol.60 No.2(1992年4月号)において、和光純薬工業 大阪研究所 上森 仁志が執筆したものです。

鉛は金属としての優れた特性から、あらゆる産業分野で幅広く利用されています。しかし鉛の暴露は人体にさまざまな悪影響を与えたことから、鉛を取扱う業務に従事する作業者の特殊健康診断が実施されており、この診断方法のひとつとして尿中に排泄されるδ-アミノレブリン酸の測定が広く行われています。

δ-アミノレブリン酸(ALA)は、ヘム生合成過程の前駆体として、δ-アミノレブリン酸合成酵素(ALA-S)の作用によりサクシニル CoA とグリシンから合成されます。この ALA は、δ-アミノレブリン酸脱水酵素(ALA-D)の作用によりポルフォビリノゲンへと変換され、最終的にヘムが生合成されます。

ALA-D の活性は、鉛により SH 基が阻害をうけるためヘム合成が抑制され、このヘムの合成量が減少するとフィードバック機構が働いて律速酵素である ALA-S の活性が増加し、代償的に ALA の合成が促進され ALA の血中濃度が上昇し、尿中への過剰排泄が引起こされると言われています。1)

現在一般的に行われています ALA の測定法には比色定量法がありますが、呈色安定性が悪い、検出感度が低い、共存物質の影響を受けやすい、などの問題があります。これら問題を解決する方法として、HPLC による迅速で高感度な測定方法が岡山2)らにより報告され注目されています。

そこで当社の充填剤を用いた場合の最適分析条件の検討を行った結果、Wakosil-II 5C18HG 充填剤が最適となり、妨害物質の影響もなく 10 分以内に測定が終了する分析系を組立てることが可能となりました。又、その時の直線性、再現性、回収率とも良好な値を示し、十分に実用性あるものと確信しています。

以下、測定データを示しました。

δ-Aminolevulinic Acid 誘導体の分析
直線性

標準液 B(50 mg/L)を水で 2 倍、10 倍、100 倍、に希釈し、誘導体化を行い各々 2 回分析し、検量線を求めたところ 相関係数 = 0.9999 と良好な結果が得られた。

再現性

標準液 5 mg/L を誘導体化し、10 回繰返し分析を行った時の変動係数は、保持時間 0.04 %、ピーク面積 0.69 %、ピーク高 0.80 %といずれも良好であった。

回収率

尿検体に標準品 2.5 mg/L および 50 mg/L 添加した時の回収率は、96.2 %および 93.7 %であった。

参考文献

  1. 日本臨床 43・秋季臨時増刊号 (1985)
  2. 岡山ら:医学のあゆみ 139, 845 (1986)
    A. Okayama : clin. chem. 36/8, 1494 (1990)

*試料の調製方法は岡山らの方法に準じた。

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