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【テクニカルレポート】Wakosil-II 5C18HG による血清クレアチニンの測定

本記事は、和光純薬時報 Vol.61 No.2(1993年4月号)において、和光純薬工業 大阪研究所 上森 仁志が執筆したものです。

クレアチニンは、筋・神経内でクレアチンリン酸から直接に、あるいはクレアチンの脱水によって生成され、腎糸球体からろ過された後、ほとんど再吸収されることなく尿中に排泄されます。従ってクレアチニンの測定は糸球体の高度の病変に起因する腎不全腎炎などの腎疾患、尿毒症などの診断、治療経過の観察に必須の臨床検査項目となっています。

測定法としては、Jaffe 法に基づく各種方法からクレアチニンを特異的に測定可能な酵素法へと移行してまいりましたが、臨床検査の標準化が求められる中で、各種測定法や二次標準物質の正確度の検定、施設間差是正のために行われるコントロールサーベイでは、HPLC 法での測定値との比較により精度管理を行うことが試みられています。

血清クレアチニンの勧告法試案による実用基準法では、陽イオン交換樹脂充填カラムによるイオン交換クロマト法が採用されていますが、分析時間、カラムライフ、耐圧性などの面から十分に満足できる方法とは思われません。

そこで一般的な ODS 系充填剤を用いる分析方法の確立とイオン交換法との相関性について検討を行いました。

分析条件の確立

ODS 系充填剤として Wakosil-II 5C18HG を選び、最適分析条件の検討を行った結果、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を用いるイオンペアークロマト法により、妨害物質の影響(クレアチニンデイミナーゼ処理により確認)もなく 6 分以内に測定が終了する分析系を組み立てることが可能となりました。

その時の分析条件とクロマトグラムを図 1 に示しました。

図1.血中クレアチニンの分析

操作法

前処理(除たんぱく、酢酸エチル処理)、HPLC による測定操作は、血清クレアチニンの勧告法試案による実用基準法に従って行いました。

直線性

0.1 mg/dL ~ 10 mg/dL の標準液を調製し、前処理、測定とも n=2 で検討した結果、相関係数:0.99999 と良好な直線性が得られました。

再現性

前処理を行った標準液 5 mg/dL および 10 mg/dL について各 12 回繰り返し分析を行った結果、変動係数は 0.60 %、0.50 %と良好な再現性が得られました。

相関性

血清試料 5 検体を用いてイオン交換クロマト法との相関性を検討しました。

その時の結果を表 1 に示しました。

表 1. 相関性
HPLC 法
血清サンプル No. ODS (mg/dL) イオン交換 (mg/dL)
1 0.24 0.24
2 0.74 0.74
3 2.23 2.25
4 4.26 4.32
5 8.84 8.69
相関係数 0.9999

以上、本法は、イオン交換クロマト法との相関性も良好であり、直線性、再現性にも優れ、クレアチニンのピーク形状も良好であり、血清試料の分析においても 6 分以降に不明ピークは検出されないことから分析時間の短縮も可能で実用性ある方法と考えています。

参考資料

  1. 血清クレアチニンの勧告法試案(日本臨床化学会分析部会)
  2. クレアチニン-HR II ワコー 現品説明書

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