【テクニカルレポート】カラムスイッチング法による生体試料直接分析(カラムライフ改善検討)
本記事は、和光純薬時報 Vol.67 No.2(1999年4月号)において、和光純薬工業 大阪研究所 上森 仁志が執筆したものです。
近年開発された生体試料直接分析用充填剤は、従来 ODS 充填剤を用いた場合に必要となった除タンパクや検出、濃縮などの前処理操作が不要であり、分析時間の短縮や測定精度、および再現性の面からも優位であることが報告されている。しかし、除タンパクと生体成分の分離を同一担体上で行うという充填剤の設計上の理由から、分離性能的には ODS 充填剤に比べ劣るところがあり、本充填剤を前処理カラムとして使用するカラムスイッチング法が主流となっている。
筆者らは、先に本目的に使用できる充填剤として Wakosil GP-N6 を開発しその有用性を報告してきた。しかし、一度に 200 µL 程度の血清試料を注入分析する場合には、前処理カラムの圧力上昇、分析カラムの性能低下などカラムライフに問題が残っていた。そこで、カラムライフの改善を目的に、1)カラムスイッチング法、2)有機溶媒比率、3)注入量とカラムライフの関係について検討した。
高圧六方バルブ付カラムスイッチングシステムを持つ HPLC 装置を使用し、前処理用カラムに Wakosil GP-N6, 4.6 mm I.D. × 50 mm を、分析カラムに Wakosil-II 5C18 RS, 4.6 mm I.D. × 150 mm を使用し、アセトニトリルとリン酸緩衝液を用いた移動相条件下に牛血清を直接注入して検討した。
1)カラムスイッチングの際、前処理カラムから分析カラムへ目的物を導入する方法において、①分析用移動相を用いて逆方向に導入する方法、②順方向に導入する方法、③前処理用移動相を用いて順方向に導入する方法の 3 法を比較した結果、①、②のシステムでは前処理用カラムのみならず分析カラムへの影響も大きかったが、③の方法は前処理用移動相条件を適正に設定することにより分析カラムへの影響を回避しカラムライフの改善が可能であった。
そこで本法を採用し、2)前処理用移動相にアセトニトリル / 0.1 M リン酸緩衝液(pH 6.0)を用いて有機溶媒比率の影響について検討した結果、有機溶媒濃度 10 %までは安定に使用可能であった。3)最大注入量 200 µL までの検討において、連続 200 回以上の分析後も分析カラムの劣化は認められず、注入量 100 µL では連続 400 回以上の使用が可能であった。
以上の検討結果から、200 µL 程度の大量の血清試料を安定的に注入分析するためには、1)前処理カラムから分析カラムへの目的物の導入方法は、前処理用移動相で導入すること、2)前処理カラムに使用する有機溶媒濃度は 10 %までとすること、の 2 点が必須項目と考えられた。
本方法によりカラムライフは飛躍的に改善されたが、保持の差の大きい成分を同時分析する場合には、分析時間が方法①、②に比べ長くなるとの問題もあり、分析時間の短縮検討と高感度検出系の確立に向け継続検討中である。
方法③を使用した場合の耐久性試験結果を図 1. に示した。
参考文献
- 分析化学会第44 年会講演要旨集 p78-79(1995)
- 和光純薬時報 p14,Vol. 64, No2 (1996)